小さな幸せを見つけるチカラ~移植経験から学んだ生きる知恵~

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腎臓移植小説 第22話:手を取り合う約束

 日曜の午後、僕は少し早めに駅前のカフェに着いた。
 落ち着かない心を落ち着けようと、アイスコーヒーを一口、また一口と飲んでは、窓の外を見つめていた。

 少しして、ユカが現れた。
 陽射しの中を歩いてくる彼女は、いつもより少しだけ大人びて見えた。
 お互いに照れくさく笑い合い、席につく。

 「話って……台湾のこと?」

 そう言ってユカが少し緊張したように僕を見る。
 僕はうなずいてから、ゆっくりと言葉を選んだ。

 「うん。……応援したいって思った。正直、さみしいって気持ちもあるけど、それ以上に、ユカが夢に向かってる姿が、ほんとうに素敵だって思った」

 ユカの目が、少し潤んだように見えた。
 言葉が見つからないのか、彼女は静かに僕を見つめていた。

 「遠くにいても、ちゃんと心はつながっていられると思う」
 「それに、僕もやることがある。大学院、研究、就職……。お互いに頑張って、ちゃんと会える日を楽しみにできるような時間を過ごしたい」

 その言葉に、ユカは小さくうなずいた。
 「ありがとう……。うれしい。ほんとうに」

 それから、ふたりで何時間も話した。
 将来のこと、お互いの家族のこと、そして小さな夢や不安のことまで。
 気づけば日が暮れて、カフェの照明があたたかく足元を照らしていた。

 別れ際、ユカは笑って言った。

 「台湾でもね、神様に祈るよ。Jが、自分の道をしっかり歩けますようにって」
 「私もがんばるから、一緒に頑張ろう」

 駅の改札口で手を振り合いながら、僕はふと思った。
 この人となら、きっとどんな距離でも越えていける気がする。


※次回 第23話「希望を育てる日々」へ続く
(遠距離という現実の中で、それぞれの挑戦が始まる。そして、Jの人生にも大きな転機が訪れる──)