日曜の午後、僕は少し早めに駅前のカフェに着いた。
落ち着かない心を落ち着けようと、アイスコーヒーを一口、また一口と飲んでは、窓の外を見つめていた。
少しして、ユカが現れた。
陽射しの中を歩いてくる彼女は、いつもより少しだけ大人びて見えた。
お互いに照れくさく笑い合い、席につく。
「話って……台湾のこと?」
そう言ってユカが少し緊張したように僕を見る。
僕はうなずいてから、ゆっくりと言葉を選んだ。
「うん。……応援したいって思った。正直、さみしいって気持ちもあるけど、それ以上に、ユカが夢に向かってる姿が、ほんとうに素敵だって思った」
ユカの目が、少し潤んだように見えた。
言葉が見つからないのか、彼女は静かに僕を見つめていた。
「遠くにいても、ちゃんと心はつながっていられると思う」
「それに、僕もやることがある。大学院、研究、就職……。お互いに頑張って、ちゃんと会える日を楽しみにできるような時間を過ごしたい」
その言葉に、ユカは小さくうなずいた。
「ありがとう……。うれしい。ほんとうに」
それから、ふたりで何時間も話した。
将来のこと、お互いの家族のこと、そして小さな夢や不安のことまで。
気づけば日が暮れて、カフェの照明があたたかく足元を照らしていた。
別れ際、ユカは笑って言った。
「台湾でもね、神様に祈るよ。Jが、自分の道をしっかり歩けますようにって」
「私もがんばるから、一緒に頑張ろう」
駅の改札口で手を振り合いながら、僕はふと思った。
この人となら、きっとどんな距離でも越えていける気がする。
※次回 第23話「希望を育てる日々」へ続く
(遠距離という現実の中で、それぞれの挑戦が始まる。そして、Jの人生にも大きな転機が訪れる──)