その日の夜、部屋に戻ってからも、僕の心にはユカの言葉が残っていた。
「私を愛してくれる神様をを信じるという土台があることで、毎日希望をもっていきることができるの」
それは僕にとって、まるで異国の文化に触れたような感覚だった。
自分はどうだろう。
軸と呼べるような、人生の支えになるものを持っているだろうか。
ベッドの脇の机に置いてあったノートを手に取る。病院にいたときから、気持ちを整理するためにつけていた日記だ。
何も書かずにページをめくっていくと、大学2年の夏、移植手術の前夜のページが目に入った。
《正直、こわい。でも、生きたい。まだやりたいことがある。普通に、大学に通いたい。普通に、生きたい。》
そのときの気持ちは、今も変わっていない。
ただ、その「生きたい」という願いを、何に向かって繋げていくのか、今はまだ答えが見えなかった。
ユカの信じている神様のことを、心のどこかで「遠いもの」と思っていた自分。
でも、彼女のように何かを信じて、そこに寄りかかれるなら、もっと前を向いて生きられるのかもしれない——。
次の日、目が覚めて最初に浮かんだ言葉は「研究」という言葉だった。
自分が夢中になれるもの、自分を動かす何か。
もしかしたら僕の「軸」は、そこにあるのかもしれない。
僕はすぐにそのことをユカに話した。
ユカは僕が夢中になれるものを見つけられそうなことを喜んでくれた。
けれど、どこかぎこちない笑顔だった。
※次回 第15話「ぼくが夢中になれるもの」へ続く
(自分の軸を見つけたい——そう願うJは、大学のある講義をきっかけに、研究の世界に引き込まれていく。初めて「これは自分の道かもしれない」と思ったその瞬間とは——)
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